株式会社愛研 環境保全事業
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なぜ自然に手を入れることが環境に良いのか

【なぜ環境に良いの?】〜その5〜

自然に手を入れない「環境保全」によって得られた経験

「環境保全とは、自然をありのままにして、人間が手を入れないことである。」…このような考え方は、過去に主流であり、今もまだ、人々の意識や、制度にも根強く残っています。バブル経済のもとでの過度な開発に対抗するために環境保全が叫ばれた時代の議論の結果、そのような環境保全が積極的に取り入れられた場所や、バブル崩壊もあって結果的にただ放置されることになった場所も少なくありませんでした。

しかし、人が自然に手を入れない結果として実際に起こったことは、どのようなものだったでしょうか。平たく言えば、単純になってしまったのです。一定の条件下で、強い種類の植物だけが茂り、森の中が暗くなってしまったり、他の植物が生えれる場所がなくなってしまう。その結果、林床に生えていたはずの様々な低木や草本も種類を減らすか、そもそも生えなくなってしまう。そうなると、様々な植物の葉を食べに来ていた昆虫が減り、それを食べに来ていた鳥が減り、様々な植物の実を食べに来ていた動物も減り…ということで、いわゆる「生物多様性」が乏しくなってしまうことが、あちこちで見られるようになりました。

生物多様性が乏しいことの不気味さは、放置されたまま間伐が実施されなかった「荒廃人工林」が極端な例です。単一の樹種のみが光を独占した暗い林内には、他の生き物の気配が全く感じられません。荒廃人工林で最大の問題となる「雨水が森林土壌に浸透しない問題」は、実は密生した枝葉によって生じた「大きな雨粒」による土壌の物理的破壊等の影響の方が大きいのですが、逆に言えば人工林であっても、林内が明るく他のたくさんの種類の植物が茂り、昆虫や動物の多い森林では、もちろんそのような問題はありません。

いわゆる生き生きとした自然が、その多面的な機能を発揮するには、生物多様性が豊かであることが、人工林、自然林を問わず大切であるという認識が、様々な現場で共有される時代になったのです。

生物多様性の豊かさを実現するには

基本的な考え方として持っておくと良いのは「弱い生き物でも生息できる場を用意する」という考え方です。

生き物は、それぞれ生存戦略を持っています。たとえば植物であれば、主に光を奪い合う競争の中で生きています。代表的な生存戦略で分けると、他の植物よりもより早く成長することで光を得ようとするものと、成長は遅いが、少ない光でも着実に成長するものに分けられます。一般に、早い成長を戦略とする植物は、痩せた土壌、悪い水分条件や乾燥、あるいは物理的攪乱など「厳しい生育環境」でも耐えて生き延びる性質を持っています。それに対して、少ない光でも着実に成長できることを戦略とする植物は、肥えた土壌が生成する「安定した生育環境」では、最終的には必ず他の植物を圧倒します。

よくある場合、自然に手を入れずに放置すると、生育環境は次第に安定して、その生育環境で最も強い(少ない光でも耐えられる)植物が他の植物を圧倒するようになります。他の植物よりも早く成長することで光を得ようとする植物は、少ない光の中では成長できないので、例えば風水害による攪乱など「チャンス」がない限り生息することはできず、そういう意味では「弱い植物」ということになります。

生物多様性の豊かさを実現するには、放置されて安定した環境だけでなく、不安定な環境も一定範囲共存させることが必要です。具体的には、放置しておけば基本的に環境が安定していく状況では、人が意図的に環境を攪乱するなど、強い生き物にとっては不利な状況をあえて作り出して、弱い生き物でも生息できる場を用意する必要があると言えるのです。

人が節度を持って自然に手を入れることで空間と時間を多様にする

人が意図的に環境を攪乱するのにしても、広範囲の森林を全て刈り取ってしまう(皆伐)では、当然「やり過ぎ」になってしまうので、人が節度を持って自然に手を入れることが、生物多様性を豊かにするためには重要です。

具体的には森の一部だけを刈り取ったり、一部の木だけを伐ることで、光が多い空間と少ない空間というモザイク的な空間の多様性が生まれます。光を好んで土が痩せているなど厳しい生育環境でも成長が早く、しかし少ない光には耐えられない植物があっても、そのモザイク的な空間の多様性を利用して生育できるようになります。

空間の多様性は、それが時間的に変化のないものでも生物多様性を豊かにしますが、人が自然からの恵みを継続的に得ようとして、毎年、一定の場所で、一定の時期に、一定の手を入れるということがあれば、その保証されたサイクルとも言うべき撹乱に適応して生息できる生物が現れて、生物多様性はさらに豊かになります。

例えば、伝統的な水田は、水が入れば、それを毎年出現する餌場ないし産卵場として利用する魚やカエルが、用水路などから入ってきて、水が無くなる頃には用水路に戻るというように、流れには弱くても攪乱には強い生物の生息場所となっていました。植物でも、春先の刈取りや火入れという人の手による定期的な攪乱が、光が土壌表面まで豊富に届くわずかな期間を利用して生育する「スプリング・エフェメラル」の存在を可能にします。

結局、人が節度を持って自然に手を入れることは、空間と時間を多様にし、それによって、放置しておくよりも様々な生き物に生育の機会を提供することになる、すなわち生物多様性を豊かにすると言えるのです。

※本稿は林進先生の論文「人為の変化と生物相」を参考にさせて頂きました。

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